高校の授業inドイツ。 教育から感じたドイツの国民性とは?

2008年8月〜2009年6月の約1年間、ドイツのMünsterという街に留学していました。
そして、そのうちの9カ月は現地の ”Realschule”(レアルシューレ)というタイプの高校に通っていました。
その時に受けた授業や、学校生活の中で「日本とは全然違う!」と数々の衝撃を受けました。
日本での学校生活という限られた範囲でしか世界をしらなかった自分に、9カ月間のドイツの学校生活は新たな視点を与えてくれました。
改めてドイツに来て見ると、当時のことを振り返って思い出すことが多々あるので、忘れないうちに言葉にしておきます。

(そもそも「なぜ高校でドイツに留学したか」っていう点については、また別の機会に書きます。)

1、数学

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あれは、転校初日の出来事でした。3時間目は数学の授業。
僕は日本の高校では特に数学が得意だったわけではなく、どっちかっていうと「なんのためにこれやってるの?」って懐疑的な生徒でした。
よく意味もわからず授業を受けていて、かつ自分が納得していないと勉強に身が入らないタチだったので、何気に赤点スレスレを取っていた。

クラスの何人かの顔と名前を覚え、ようやく落ち着いて来た頃に授業が始まる。
単元は一次・二次関数。日本ですでにやっていたのもあるけど、「あれ?」って拍子抜けするくらい簡単だった。
留学は初日が肝心と思っていたし、これ目立つチャンスやんと思って、手をあげて答えた。
「Das ist Nr.3」(答えは3番です)。

そしたら「Richtig, aber Warum?」(正解、でもなぜ?)と聞かれた。
先生は僕に、思考のプロセスを言語化する問いを求めた。
僕は、日本の授業でそんな切り返しをされた経験がなかったので、一瞬たじろいだ。
(うっ、まじか、、答えなきゃアカン雰囲気やん)って思ったけど、
その時はなんとか、「Recht hoch Links unten」(グラフの右側が高く、左側が低いから)みたいな説明で乗り切った。
自分としては、拙いドイツ語でなんとか伝えたけど、先生も「gut.」(いいね)と一言さらっと言って次の問題に移った。
そんな留学生でも全く特別扱いしないところもドイツっぽいw

何で? 何のために?
決まった答えを答えるのではなく、そこに至るまでの思考プロセスを育てるのがドイツらしさなのかなって感じた。
今の例だと、ドイツ語が拙いことは別に問題じゃなくて、ちゃんと自分の中で理由を考えて答えを導いているかが重要だったんだ。

あくまでもこれは自分の体験の一部でしかないから、「ドイツではこう」ってひとくくりにはできない。
でも、やっぱりドイツにいる人達は自分の頭で考えたがる傾向はあると思う。
何より「数学って答えが合ってれば点取れるし良くね?」としか思ってなかった高校生の時の自分にとって、
数学は自分の力で答えを導くプロセスに意味があることを初めて実感した衝撃的なできごとだった。

自分の頭で考えて、納得した上で実行に移したい。
幼い頃からそういう風に思っていた僕にとって、この環境は居心地がよかった。
そして、留学生だからって特別扱いしない(容赦しない?w)感じも、逆によそよそしくなくて
「おっしゃ、じゃあ全力でキャッチアップしたろ」ってポジティブに思えた。

「環境問題」への興味と、なんとなくフィーリングで選んだドイツが、
やっぱ自分に合ってるなって実感したのはおそらくこの時なんだろう。

2、国語

「決まった答えなんてない。」
こう聞いて、皆さんはどう言う印象を受けるでしょうか。
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国語(ドイツ語)の時間に作文の授業がありました。
作文の授業は日本でももちろん経験があって、読書感想文とか苦手すぎて夏休みの終盤に苦しみながらやっていた生徒の一人です。

「まじかー、よりによってドイツ語で作文かよ」と思っていたのですが、今回はいささか違う形式でした。
上の写真見たいな感じで、「島の上に鳥が飛んでる絵からオリジナルストーリーを連想して書く」っていう授業でした。
しかも2人ペアで、時間がきたらノートを交換して、今度はペアになっている人のストーリーを書く。
最後にまた交換して、残りは宿題。
なぜかオリジナルストーリーを書くことにハマって没頭してしまい、3時間くらいかけて最終的に僕がペアの友達の妹と結婚するという
ブコメ的な作品に仕上がった。
翌週の授業でクラスの前で発表することになり、ちょっとオーバーな演技も交えて発表したらめっちゃウケた笑
結局、学校のホームページに掲載されることになり、文章で賞とか一切とった事ないから素直に嬉しかった。

「決まった答えなんてない。」
これは、生みの苦労と喜びを両方味わうことのできた、自分にとってはかけがえのない経験でした。
答えがあるとそれはそれで楽なんですよね、考えなくていいから。でも面白くない。
答えがない問いって大変なんですよね、めちゃめちゃエネルギーを使って考えるから。でも面白い。

別に毎回こんな授業をしているわけではなく、たまーにこういうのがあるんですけど、
自分の頭で考えてそれを表現するのって大変だけど面白い。そう感じさせてくれた出来事でした。

3、英語

ドイツの人って、基本英語でも流暢に会話できるんです。
第二外国語なのにすげーなと思うんですが、授業を実際受けてみるとなんでか分かりました。
まず、テキストも授業も基本全部英語でした。
評価の基準も、授業中にどれだけ発言したかが結構重要なんです。
だから、テストの点があまり良くなくても英語で意見を言ったり、質問したりすると成績は上がるし、その逆も然りです。
僕は結構このスタイルが好きです。授業もにぎやかになるし、英語で喋ることが前提になる。
ただ、ドイツ人の中でもシャイで発言するのが苦手な子はいるし、そういう子にとっては結構大変なシステムであります。
そんな英語漬けの授業を週に4回は受けていたので、英語力も上がった気がします。

ただ、宿題がどこかだけはドイツ語で言うので、最初のうちは何回か忘れて、容赦なくペナルティの宿題をもらったりしました。笑
全て自己責任、留学生も特別扱いしない(容赦しないw)ドイツの洗礼をまさかの英語の授業で受けました。

4、体育

体育も驚き要素がありました。
まず、高校なのに男女混合なんですね。笑
で、激しくサッカーやドッヂボールをする。ドイツの女子強し。
日本では中学以来男子だけで体育をやっていたので、最初はどういうスタンスで体育をやればいいのかよくわからなかった。
でもなんか、ドッヂボールで手加減するのも女子・男子っていうくくりじゃなくて、
「この子はあんま運動得意じゃないから手加減しとこ」「この子は8割くらいで言っても大丈夫w」みたいな関係性とか個人の力量で
やってるな、って思った。

服装は自分で選んで良くて、それぞれ好きなサッカーチームのユニホームとか、スウェットとか
好きなスポーツウェアで参加してた。
その中で女の子が露出度高い運動服を着ていると目のやり場に困った。笑

卓球も盛んで、卓球台10コートくらい作れる卓球台があるんですね。
ドイツは学校の部活がなく、運動したい人は放課後に自分で選んでスポーツアクティビティをやります。
運動能力とかはバラバラでした。

5、先生方。

○厳しさ
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僕の通った高校では「校内で許可なく写真をとってはいけない」規則があるらしく、自分は知らずに写真撮ってたけど、たまたま通りかかった校長先生に容赦なく没収された。笑 
「知らなかった」では通用しない。No excuse.
なので後日校長室に平謝りしに行って返してもらった。
ほんと、「校長先生ないわー」って思ったし、友達も「あの人は特別厳しいから」って言ってた。
ある意味これが最もドイツ人らしいと感じた経験かも。

ただこれには続きがあり、帰国前にお世話になったお礼?お詫び?のため、校長室に飾れる花を渡しに行ったら
「いつでも遊びに帰っておいで^^」と言ってくれた。ツンデレが過ぎる笑
罪を憎んで人を憎まず。的な感じの人だったんだな。

○ユルさ
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ドイツの先生方、登校の仕方が自由過ぎた。
担任の先生はキックボードに乗り、髪をなびかせながら登校。
理科の先生はチャリの後ろにベビーカーを付けて、幼稚園に子供を送ってから登校。
国語の先生は、午後しか授業がないのでお昼を家から食べて来てから登校。
もしかしたら生徒よりも自由かも。笑

まとめ

もちろん、あくまで僕が見てきたドイツなので、ほかの留学経験者ともまた意見は異なるだろう。
でも、僕は傾向としてこんなことを感じた。

○自分の頭で考え、意見を言いたい
さすが哲学の国。
自分の頭で考えて、意見を発信することに価値がある。
その価値を実際に評価する。

○特別扱いしない。
そもそも、多様性のある環境だった。
国籍的なバックグラウンドは様々で、特に自分は特別な存在ではなかった。
あとは、明文化されたものに関しては例外はないみたいな厳格さはある。

○自由でありたい
一般的なドイツ人像からすると意外だけど、実は根底にはこれがあるんじゃないかって思ってる。
自分で考える力をつけるのは、各自が自由に考え、精神的に自立するためかなって思う。
規則に関しても、厳しさとゆるさが極端。
写真の例など、安全とか権利とか必要なところに関しては厳しいけど、服装とか勤務時間に関しては必要最低限だなって思う。


いかがでしょうか。
こうして文章化するとすごくクセの強い国だなって思いますが、僕はそんなドイツが好きです。
Thank you for Reading!
Vielen Dank!